USCPA(米国公認会計士)— なぜいま取るのか
日本の公認会計士試験と比べてどうなのか、という話をよく聞かれる。端的に言えば「難易度は同等だが、働きながら取れる」のがUSCPAの最大の特徴だ。
USCPA(U.S. Certified Public Accountant)はアメリカの公認会計士資格で、日本国内でも取得が可能。BIG4監査法人の国際部門、外資系投資銀行・コンサルファーム、グローバル展開する日系大手の経理・財務部門で広く評価されている。IFRS(国際財務報告基準)の知識が体系的に身につくため、グローバルビジネスに関わる人間にとってのパスポート的資格といえる。
転職市場での見られ方も独特だ。「USCPAホルダー = グローバル会計の基準を理解している」というシグナルになる。日本のCPAとは市場が異なるため、競合が少ない希少性もある。
受験資格・登録州の選択
USCPAの受験資格は各州(State Board)が定めており、日本人に人気の州がいくつかある。
日本人に人気の州
| 州 | 特徴 |
|---|---|
| ワシントン州 | 学歴要件が比較的緩い。大卒+会計単位要件を満たせば受験可能 |
| アラスカ州 | 単位要件が取りやすいとされる |
| モンタナ州 | 社会保険番号(SSN)不要で受験しやすい |
| ニューハンプシャー州 | 居住要件なし、単位要件が現実的 |
重要: 州ごとに「学士号取得」「会計単位(Accounting Credits)」「ビジネス単位(Business Credits)」の要件が異なる。自分の学歴・専攻に合わせて最適な州を選ぶことが重要。
単位要件の補充方法
日本の大学で会計・経済を専攻していない場合、米国大学の通信講座(CLEP、放送大学との単位互換など)で不足単位を補充するのが一般的。
日本での申込窓口
日本では アビタス や TAC などの専門予備校がNTSMA(Notice to Schedule / Matriculation Authorization)取得をサポートしており、実質的に日本居住のまま出願〜受験が可能。
試験の構成
2024年のCPA Evolution改定で試験構成が変更された。
| 科目 | 名称 | 内容 |
|---|---|---|
| AUD | Auditing and Attestation | 監査論・保証業務 |
| FAR | Financial Accounting and Reporting | 財務会計・報告 |
| REG | Taxation and Regulation | 税法・ビジネス規制 |
| BAR / ISC / TCP | Discipline科目(3択で1科目選択) | BAR=事業分析と報告、ISC=情報システム管理、TCP=税務法律コンプライアンス |
4科目すべてに合格(各科目75点以上 / 99点満点)が必要。ただし、合格した科目は30ヶ月間有効(2024年改定)。段階的に合格を積み重ねられる仕組みは、社会人受験者に大きなメリット。
試験形式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施機関 | AICPA(米国公認会計士協会)+ NASBA |
| 試験会場 | Prometricテストセンター(日本国内に複数会場あり) |
| 言語 | 英語のみ |
| 形式 | CBT(コンピュータ方式)。MCQ(四択)+TBS(シミュレーション問題)の組み合わせ |
難易度と合格率
科目別の合格率(2023〜2024年実績):
| 科目 | 合格率目安 |
|---|---|
| AUD | 約46〜50% |
| FAR | 約44〜50% |
| REG | 約55〜62% |
| BAR/ISC/TCP | 約55〜65% |
日本人受験者は英語ハンデがあるため、これより若干低い傾向。ただし「4科目の合格率を掛け合わせた総合合格率」は低く見えるが、段階合格の仕組みで補完される。
FARが最難関という評価が定着している。範囲が広く(US GAAP全域 + IFRS比較)、計算量も多い。FARを最初か最後かどちらで受けるかは受験戦略の核心になる。
勉強法と学習計画
総学習時間の目安: 1,200〜1,800時間。1日3時間勉強しても1〜2年かかる計算だ。
推奨勉強順序
- FAR か AUD から始めるのが定石。FARを先に潰すか後に残すかは好みが分かれる
- FARを先に取ると、他科目が楽に見える
- AUDを先にするとFARとの相乗効果がある
- REG は税法なので、ある程度英語力と会計基礎が固まった後がよい
- Discipline科目 は最後に余裕を持って対策
教材の選び方
USCPAの学習は日本語教材が整備されているのが強み。
日本語教材(予備校):
- アビタス: 最多受講者数。日本語テキスト+英語問題集のセット。模擬試験の質が高い
- TAC: 大手予備校。通学・通信ともに対応
- GLEIM: 英語教材の定番。問題数が多く、本番に最も近い難易度
英語問題集:
- Becker CPA Review: 米国内シェアNo.1。本番と同じ難易度・形式
- Roger CPA Review / Surgent CPA: 比較的コンパクトな構成
選び方のポイント: アビタス/TACの日本語テキストで概念を理解し、GleimかBeckerの英語問題集で本番形式に慣らすのが最も効率的とされる。
費用の全体像
| 項目 | 金額目安 |
|---|---|
| 予備校費用(アビタス等) | 約40〜60万円 |
| 受験料(4科目合計) | 約1,200〜1,500 USD |
| 州への申請費用 | 州によって異なる(1〜3万円) |
| ライセンス取得費用 | 約300〜600 USD |
合計で80〜120万円程度かかるケースが多い。予備校費用がもっとも大きく、独学で受験費用のみに絞ると40万円台も可能。
キャリアへのインパクト
評価される職場
- BIG4監査法人の国際部門・海外部門: USCPAは事実上の入場券になっている
- 外資系投資銀行・コンサルファーム: 財務分析・デューデリジェンス業務に直結
- グローバル日系大手の経理・財務: 海外子会社管理、IFRS対応業務で重宝される
- FAS(Financial Advisory Services): M&Aアドバイザリー、バリュエーション
日本のCPAとの組み合わせ
日本CPAとUSCPAの両方持ちは最強の組み合わせとされる。日本基準とUS GAAP/IFRSの両方を理解できる人材は非常に少ない。
次のステップ
- CFA(米国証券アナリスト): 投資分析にシフトしたいなら
- 公認内部監査人(CIA): 内部監査・ガバナンスのグローバル資格
- 税理士: 日本の税務専門家資格との組み合わせ
